「会社を辞めた方がいい」と感じる出来事があった

タイトルの通り、最近、会社を辞めた方がいいと感じる出来事があった。

このままこの会社にいても私に未来はない、そう思ったのだ。

結論から言うと、その理由は上司に嫌気が差したからである。

今までは私の中で比較的好感度が高かった上司だが、ある出来事のせいで一気に評価が変わった。

いや、厳密に言えば、正体が発覚したというべきだろう。

今回は、私の気持ちの整理も含めて、その件を順を追って説明したい。

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事の始まり

まず初めに、今回のことを知ってもらうためには、私が働く会社の雇用システムを話す必要がある。

私の会社では、二種類の派遣社員が起用されている。

一つ目はフルタイムで働くレギュラー派遣。

これが私の雇用形態である。

週5で働くいわゆる普通のサラリーマンのようなものだ。

もう一つは繁忙期などで受注生産が多くなった時に臨時で雇用する、スポット派遣である。

これは昔でいうところの日雇いバイトのようなもので、1日単位で雇用するシステムである。

私の働いている部署では、普段は8人のレギュラー派遣で回しているのだが、受注生産が多くなるとこのスポット派遣を要請している。

ある日、そのスポット派遣の中に、20代の女性が入って来た。

私の部署の女性は全員が40代なので、女性の中では一番若いことになる。

ここではその女性をY子さんと呼ぶ。

Y子さんは細身で、おっとりとした性格をしており、20代後半ながらパッと見は大学生のように見えた。

このY子さんのことを私の直属の上司が物凄く気に入ったのだ。

普段はダウナー気質の上司だが、Y子さんが来た時だけはテンションMAXの状態になり、態度も他の社員とは明らかに違う。

基本的に仕事は「自分で覚えろ」というスタンスの上司だが、Y子さんにだけは手取り足取り物凄く丁寧に教えるのだ。

いわゆる「えこひいき」というやつである。

女性一人のためにここまで態度が変わる上司の姿に、私も最初は戸惑いを隠せなかった。

とはいえ、人間なのだから好き嫌いはあるだろうし、ましてや上司も男なのだから好みの女性の前では格好つけたくなるのも仕方ないか。

そう思って割り切ることにした。

しかし、そう思うのにも限度がある。

次第に上司の本性が垣間見える出来事が起こってくる……。

不可解な上司の指示に戸惑う

その後もY子さんは度々スポット派遣として会社に訪れた。

ある日のこと、私は普段とは違う役回りの仕事をさせられたことがあった。

通常ならばその役割はいつも決まった社員がやっているのだが、なぜかその日は私が任命されたのだ。

そのことは他の社員も疑問に感じたらしく「ゆみよしさん、今日は何でこの仕事してるの?」と聞かれるくらいだ。

上司の指示なので、私にもその意図はわからなかった。

ただ、HSPの私は瞬間的にある考えがよぎった。

その理由は、Y子さんと私の距離を物理的に離すことである。

実は、その日に私が任された仕事はY子さんがいる位置と離れた場所にあるので、Y子さんとは接触できないのだ。

「いやいや、それは考えすぎだろう」と思うかもしれないが、私がそう思ったのも根拠はある。

理由は、その日の前日にY子さんと私が仲良く話しているところを上司が見ていたからだ。

私としては他愛ない会話だったので、全く意識していなかったが、どうやらこれが上司の逆鱗に触れたようなのである。

その真相を確かめるべく、上司のいないところでY子さんに上司から何か言われなかったかと聞くと、

「ゆみよしさんと昨日は何を話していたか聞かれました」とのこと。

どうやら私の推測は当たっていたようだ。

Y子さんは私のことを親しみやすいと感じたらしく、その時は上司に「お兄ちゃんみたいな人です」と答えたらしい。

それを聞いて私は瞬間的に「これはマズイことになった……」と察した。

上司の目線からは私は自分のお気に入りを狙う恋敵に見えたのだろう。

だから物理的に距離を離す配置で仕事をさせたのだ。

こちらとしてはそういった気持ちはないので、かなり理不尽に感じるが、残念ながら証拠はない。

とりあえずの対処法として、私はその日以来、意識してY子さんには近づかないようにすることにした。

だんだん明かされる上司の人間性

そんな努力の甲斐もあって、数日後には私は元の仕事場に戻された。

上司もあれ以来私への警戒心も和らいだようで、普段のように接してくるようになった。

基本的に私がY子さんに近づかなければ何も問題はない。

そう思っていた。

が……その考えは甘かったのだ。

ある日のこと、上司は上機嫌で私に「明日デートなんだよね」と言ってきた。

相手が「誰か」とは言わなかったが、私からすればすぐに相手はY子さんだろうと検討がついた。

「前々から行ってみたいケーキ屋さんがあってさー、そこに行くんだよね」

と嬉々と語ってくる上司。

私としては内心前回の件でシコリがあったが、寛大な気持ちを持って表面上は「良かったですね」と労っておいた。

これでようやくこの件も一件落着か、と半ばホッとした気持ちである。

しかし、その日の昼休憩の後、午前中とは打って変わって上司の態度が急変したのだ。

あれだけ嬉々としていた上司が不機嫌オーラ全快なのである。

その豹変ぶりは凄まじく、少しでも仕事でミスがあれば容赦なくダメ出しするぞ、と言わんばかりに私の言動を見張っているのだ。

まるでドラマに出てくる小姑のようである。

その態度を見て、私はすぐにあることを察した。

もしかしてY子さんにデートの約束をドタキャンされたのではないか、と。

そのことを確かめるべく、帰り際に上司に「明日のケーキ屋楽しんできてください」と伝えると

「そんなのはどうでもいい」

と物凄くぶっきらぼうに答えられたのだ。

その表情は明らかに午前中の嬉々とした顔とは違い、陰のオーラをまとっていた。

「相手もG子さんだし、行くのもかったるくなったわ」

と、付け加える上司。

「G子さん」というのは、一年ほど前までここで働いていた女性社員で、私の先輩にあたる人のことだ。

仕事がとてもできる人で、上司の右腕的存在の立場だった。

当時は、私も色々お世話になっていた。

上司とは比較的仲が良く、退職後も連絡を取り合っていることは知っていた。

しかし、上司がG子さんを「女」として見ていないことは当時からわかっていたこと。

それはY子さんの態度と見比べても明白である。

そんなG子さんをデートに誘って嬉々とするのは絶対にありえない。

ましてや、ここにきてデートの相手の名前を出すのも不自然である。

恐らく、最初は自慢のつもりで私にデートのことを話してきたのだろうが、ドタキャンされたと発覚すれば上司のプライドにさわるので、G子さんの名前をあえて出したのだろう。

ドタキャンされたことで気分が落ち込むのは仕方ない。

しかし、だからといって、そのイライラを私に向かってぶつけてくるのは、人としてやってはいけないことだ。

この件で、私の中の上司の評価がさらに下がった。

しかし、この段階では、まだ仕事を辞めたいと思うほどではなかった。

上司に不快感を感じるようになる

またあくる日のこと、前回と同じく懲りずに上司は私にデートの自慢をしてきた。

表情から察するに、今回も相手はY子さんだろう。

前回ドタキャンされたのによくOKされたな、と不思議に思っていると、どうやら今回は事情が違うということが話の内容でわかってくる。

「いやー合計で2万円もいっちゃってさー。なかなかの出費だったよ」

「二人でその金額はなかなかですね。凄く高いお店に行ったんですね」

と、私が話を合わせると

「いや、三人分だったからさ」

三人……?

ここで上司の不可解な真相が見えてきた。

「あれ?デートだったんじゃないんですか?

私の質問に一瞬「しまった」という表情を見せた上司だが、すぐに平常心を装って答え始めた。

「相手の子の友達も一緒に来たからさ。まぁ後から遅れてきたから実質二人分だけどな」

それを聞いた私は内心「それはただの飲み会では……」と思ったのだが、余計なことを言わないようにぐっと堪えた。

ただ、そのことで私の中で一つの答えが見えてきた。

私の推測はこうだ。

Y子さんをデートに誘ってもなかなか来てくれない上司は、まずは三人で行くことを思いついたのだ。

二人でなら警戒されるが三人でなら敷居も低いと考えたのだろう。

そして、その三人目の相手というのがG子さんである。

前述したように、G子さんは上司の元右腕的な存在だ。

上司がG子さんを誘っても何も不自然ではない。

そしてG子さんはY子さんとも仲が良かった。

まだG子さんが会社にいた頃、Y子さんを妹のように可愛がっていたのだ。

この三人なら、上司の話に出てきたデートの相手とその友達にぴったりなのである。

そして、私の推測は見事に当たっていたことを後日知るのである……。

そんなこんなで、その後もY子さんがスポット派遣で会社に来る度に上司はデレデレとえこひいきしていた。

しまいにはY子さんのことを苗字ではなく下の名前で呼び始めた。(他の女性社員には苗字の呼び捨てである)

その呼び方が、他の社員への威圧的な呼び方と違い、背筋がゾクっとするほどの猫なで声なのである。

そういったことから、私以外の社員もだんだんと上司の異変を感じ始めたらしく、上司がY子さんに気があるということを悟り始めたようだった。

特に、女性社員の間ではY子さんは「魔性の女」として扱われていた。

そんなある日のこと、Y子さんが出勤してきたにも関わらず、妙によそよそしい上司の姿があった。

いつもならY子さんの傍から離れることは絶対にないのに、その日は全く話しかける様子がないのだ。

これは絶対に何かあったな……。

そう私は確信した。

翌日、その真相が発覚した。

どうやら、上司が女性社員の一人(F子さん)に愚痴をこぼしたらしい。

そのことを私はF子さん本人から聞くことができた。

その内容はこうだ。

「こないだデートした子が全く反応良くなくてさ。次の食事は一年後にしましょうって言われちゃったよ。あの子理想高いのかなー」

どうやら振られたようだ。

もちろん相手が「誰」とは言っていないが、Y子さんだということはF子さんもわかっていた。

F子さんも最近の上司の態度にはうんざりしていたようで、私と二人で「これでようやく上司も元に戻るね」と安堵していた。

だが、その考えが甘かったことをすぐに思い知らされることになる……。

二日ほどはY子さんによそよそしかった上司だが、その後はすぐに悪い意味で元通りになり、相も変わらずデレデレな態度になっていた。

普段がダウナーなだけに、どうしてもこの変貌ぶりを見ると不快感がぬぐえないのだ。

しかし、これだけならまだ辞めたいと思うほどではない。

本当の意味で辞めたくなったのはここからである。

ちなみに余談だが、Y子さんが「魔性の女」というのは、あながち間違いではないのかもしれない。

普通、食事に行ってそこまで言ったなら、わざわざ振った相手がいる職場になど気まずくて来れないものだ。

Y子さんはスポット派遣なのだから、来たくなければ来る必要はないのだから。

恐らく、Y子さんはモテるだけにこういったことには慣れているのだろう。

上司からすれば気持ちが揺さぶられるほど執着する相手でも、Y子さんからすればどうでもいいことなのだ。

Y子さんの方が完全に上司よりウワテなのである。

会社を辞めた方がいいと感じる出来事

ここまでの前提を踏まえて、ようやく本題に入る。

私が仕事を辞めた方がいいと感じた出来事だ。

その日も、Y子さんはスポット派遣で出勤していた。

しかし、それは不思議なことだった。

なぜなら、その日はさほど忙しくなかったからだ。

冒頭で説明したように、スポット派遣は忙しい時のみに要請される派遣社員である。

よって、レギュラー派遣だけでまかなえる生産量の日にY子さんがいることは異質なのだ。

ただ、一つだけ考えられる理由があった。

それは、他の部署ではスポット派遣が必要だったということ。

私の働く会社では部署ごとにスポット派遣が要請されているので、私の部署では必要がなくても他の部署では必要な場合もある。

しかし、Y子さんを他の部署に行かせたくない上司が無理やり私の部署に収めたのだ。

こう考えると納得がいった。

そして、それは間違いなく事実である。

なぜなら、その日は私の部署で人余りが起こったからだ。

私の部署の仕事は一人一人に仕事の担当が決まっており、各自がそれを行う仕組みになっている。

その日は想定外のY子さんが来たことで、必然的に誰か一人が余ることになるのだ。

結果どうなったか……。

なんと、Y子さんを私がやっている仕事の配役に入れたのである。

補足しておくが、私の担当している仕事は簡単な役回りではなく、部署内で一番重要なポジションである。

いうなれば花形ポジションであり、スポーツでいえばエースといえるポジションだ。

では、なぜY子さんにその仕事をやらせたのかといえば、それは上司と一番密接に関わるポジションだからである。

仕事中に上司と接する機関が多いため、隣同士で話していても不自然ではない。

なにより、仕事を教えるという名目でY子さんの好感度を上げられる。

これが上司の狙いだろう。

では、はじき出された私はどうなったかというと、雑用に回されたのである。

これは本当に異常なことだ。

サッカーで例えれば、エースストライカーをいきなりボールボーイ(外に出たボールを回収する人)に回すようなものである。

100歩譲ってY子さんを私の部署に強引に収めることは許すとしても、それならばY子さんに雑用をやらせるのが筋であろう。

それを完全なる私情で私の代わりにするとは、本当に許せないことだった。

私にも少なからずプライドはある。

客観的に見ても、貢献度はレギュラー派遣の中でも1、2位を争うレベルだし、その自負心もある。

なにより【「仕事ができる人」の立場になってわかったこと】でも話したように、私は仕事ができる有能な社員の立場なのだ。

それは上司も認めていることで、普段は私に「ほんとここの連中は使えない奴ばっかだよなー、ゆみよしもそう思わないか?」などと悪態をついてくるほどである。

この言葉自体は悪いが、裏を返せば「私は認めているぞ」という上司の遠回しな賞賛だ。

そんな私をたった一日で「おざなりにした」という事実に、私は大きなショックと怒りを感じたのだ。

しかし、それだけの仕打ちを受けても、この事実を完全に認めることができない私は、上司のいない隙にY子さんにカマを掛けることにした。

以前に上司が3人で食事をするといっていた女性がY子さんかどうかを確認するためだ。

その日の休憩時間にこっそりとY子さんの元に行き、

「こないだ上司とG子さんと三人で食事行ったらしいね。G子さんは元気にしてた?」

そう問いただした私にY子さんは驚いた表情で

「なんで知ってるんですか?」

と聞いてきた。

やっぱりだったか……。

上司を少しでも信じようとした私の良心の欠片は見事に粉砕されたのだ。

前回の女性がY子さんだと確定したら、今までの上司の行いは全てY子さん絡みだということになる。

憎悪と失望が入り交ざった気持ちが私の中で渦巻いた。

ちなみに、Y子さんには念のためG子さんから直接聞いたということにして、上司のことは伏せておいた。

私もG子さんの連絡先は知っているので、そう言っておいても不自然ではない。

最悪嘘だとバレたところでG子さんとは今後会う予定もないので特に問題はない、と判断したためだ。

今後について

今回の件で、私は人間の醜い感情を直接見せられたような気分に陥った。

一人の女性に異様に固執する上司の執着心。

その女性を手に入れるために他人を陥れても構わないというドス黒さ。

こういった感情をダイレクトに受け、この上司からは離れた方がいいのではないか、と感じたのだ。

どんなに仕事を頑張っても、たった一日で左遷させられてしまう。

仮にY子さんの件が済んだとしても、また上司のお気に入りの女性が現れれば同じことが繰り返される。

そう思うと、ここら辺りが潮時かもしれない……。

幸いにして、私は派遣という立場なので契約期間というものがある。

自分から辞めると言わなくても、契約期間が過ぎれば自然に辞めることになる。

ただ、私の立場(仕事ができる人間)からして、辞める時も引き留められる可能性はある。

しかし、そこで残ったとしても、また今回のような気持ちを味わうことになるだろう。

私にはそれを耐えられそうにない……。

もちろん契約期間内はしっかりと自分の業務をこなすつもりだ

その間にまた同じことが起こったとしても、今度は動じずに淡々と働くつもりである。

私の契約期間は残り半年ほど。

それまではこの気持ちは心にそっと封印しようと思っている。

以上が私が仕事を辞めた方がいいと感じた出来事の全容だ。